倫理規定
このページでは,有資格者が守るべき倫理規定を公開します。
GIS上級技術者の申請を行う場合には,この倫理規定の承諾書に自筆の署名及び捺印を行い,
提出しなければなりません。
倫理規定
この倫理規定は,GIS(地理情報システム)の専門技術者に対する指針である。専門技術者の適切かつ倫理的な判断を助けるためにあり,倫理的な観点において,技術者の行動を判断する礎となる。この倫理規定に従い,専門分野における社会的信用を保持し,これを高めていくことに努めなければならない。
この倫理規定は,常に相手を敬い,自己の目的のための手段とすることはないという倫理原則に基づく。この原則は,我々は自分達の行動が他者に与える影響に配慮し,他者に対する尊敬と関心をもって自らの行動を常に考えなければならないということを示す。また,他者,同僚及び専門団体,雇用者そして社会全体に対する義務を特に重要視する。このような義務感に基づいて,この指針の体系は作られている。
本倫理規定本文は,内外の様々な専門団体の取り組みを参照している。数多くの倫理規定が,同様の体系をもち,技術者に同様の指針を示している。これらは共通の道徳概念の元に成り立っているからである。ただし,GISという技術分野に特有の指針として次の事項があげられる。広く使われるデータや成果を作成すること,データや製品には必ずその説明を付すること,データ保存や保守に積極的に取り組むこと,著作権や知的所有権を尊重すること,空間解析やデータ分析における個人情報の取扱に注意を払うこと。これ以降の文章でより詳しくGIS専門技術者が果たすべき義務を説明する。
有資格者は,倫理的に振る舞うことに全力を注ぐべきであり,避けるべき行動を避けるというような,消極的な態度をとるべきではない。避けるべき行動を列挙する問題は以下の2つである。1)どのような回避規則に対しても道理にかなった例外がある,2)列挙されていない行動が暗黙的に認められる。その代わり,本倫理規定は肯定的な行為を示す。これらの行動を率直に行うことは,他者に対する尊敬を示すとともに,この精神の理解と賛同を得る大きな助けとなる。
この規定は,すべての状況に対する行動指針を示すものではない。 あいまいな部分もあり,個人の判断が求められる。例えば2つの正当な行為が互いに矛盾したり,あるいはいずれの行為も本倫理規定を侵害したりして,技術者が混乱することもある。このような問題に対しては,技術者の倫理観に関する書籍を読むことが参考になるかもしれない。つまるところ,技術者はこのような状況下において結論を出す前に慎重に考えることが必須となる。以下に示すような色々な倫理観における価値や結論を熟慮して,結論を導くべきであろう。
- 人の道を守る人を思い浮かべなさい。 (徳の倫理)
- 全ての人が受ける恩恵を最大にするよう試みよ。(功利主義)
- 他者が認める行為を最大限行うことのみを考えよ。(カント哲学)
- 常に相手を敬い,自己の目的のための手段としてはならない。(義務論)
I. 社会に対する義務
有資格者は,社会全体に対して,地理的あるいは人口的に少数である社会や次世代の人々,あるいは社会的,経済的,環境的,または技術的な分野における活動に対して及ぼす影響を認識しなければならない。 社会に対する義務は,他の義務との衝突がある場合においても最優先すべき事項である。それゆえGIS専門技術者は,次に示す事項を心がけなければならない。
1. 可能な限り最善を尽くす
- 客観的かつ払うべき注意を払い,自らの知識と技術を最大限に活用すること。
- 誠実に取組み,外部からの要求に惑わされないこと。
- 十分かつ明確で正確な情報提供に努めること。
- 物事の重要性や善悪を見極めること。
- 合法的なもののみに対してではなく真実に重きを置くこと。
2. 社会に対し,可能な限り,実現できる限りそして望ましい限り貢献する。
- 広く流通するデータや成果物を作成すること
- 問題定義,データ識別,分析及び意思決定において市民の視点を重視すること。
- 社会に奉仕すること
3. 問題に対して意見を正々堂々と述べること
- 新たな公共的な問題に注意を払うこと。自らの専門知識に基づき適切な応えを見つけること。
- 専門外の研究に対しても注意を払うこと。まず,それらの研究をしている人々に注意を払うこと。もし内容に納得できず,問題がある場合には専門の組織に相談すべきである。
- 過ちがあった場合にはこれを認め,可能な限り訂正すること。
II. 雇用者や出資者に対する義務
有資格者は,製品あるいはサービスを提供するために雇われているということを認識する。雇用者(又は出資者)は,良質な仕事と専門的な取組みを期待する。それゆえ有資格者は,次に示す事項を心がけなければならない。
1. 質の高い仕事を果たす
- 課せられた要件を満たすこと。
- 情報収集や専門能力の向上を通じて,当該分野の動向を把握すること。
- リスクを認識し,それらを取り除く可能性を探ること。
- 顧客あるいは出資者の目的を達成するための様々な方法を探り,可能な限りそれらの実現手順を示すこと。
- 作業は文書化すること。それにより他者が利用可能となる。これはメタデータやブログラム仕様書を含む。
2. 専門技術者としての対外関係の保持
- 公開する権限が与えられるまで,秘密は守ること。
- 顧客及び雇用者との利害の対立は可能な限り避けること。避けられない場合は公の判断に委ねること。
- 将来又は現在の業務や仕事上の関係において,不当な対価の勧誘や授受は拒否すること。
- 成果を向上させるための意見は受け入れること。
- 契約や課せられた義務を尊重すること。
- 法律や倫理規定に反しない限りにおいて雇用者あるいは顧客の決定に従うこと。
- セキュリティやバックアップ,保存や回復及び廃棄のための規則の完全性を高めることに協力すること。
- 顧客より提供された資材の個人利用に関する規則に従うこと。これはコンピュータやデータ,通信施設及び他の資材を含む。
- 意見の相違を解決するため努力すること。
3. 発言は正直であれ。
- 専門資格は偽りなく記載しなければならない。
- 許された資源の範囲内で仕事が完了できるよう正直な提案を行うこと。
- 時間単価に相応しい成果をあげること。
- 製品やサービスは事前に十分な説明を行うこと。
- データ,ソフトウェア,条件,モデル,手段及び分析が限られていても前向きに取り組むこと。
III. 職業や同僚に対する義務
有資格者は,他の技術者との共同体の一部であるという意義を認識する。我々は互いに支え合い,専門分野の向上を目指す。それゆえ有資格者は,次に示す事項を心がけなければならない。
1. 他者の取組みに敬意を表す
- 可能なかつ適当な場合は,他者の取組みを参考にすること。
- 他者の知的所有権を尊重すること。これにはソフトウェアやデータに対する権利も含まれる。
- 専門的な取組みに対する公平で批判的な意見に耳を傾けると共に自らも意見を述べること。
- 個人の知識や技術には限界があることを認識すること。そして必要に応じて他の技術者の技術を利用すること。これは他の専門分野の技術者や,より深い知識を持った有資格者の両方を含む。
- GISや他の専門分野の技術者と互いに尊重しあいながら上手に仕事に取り組むこと。
- 自分の周りの人々との関係を尊重すること。これには,雇用者と従業員,顧客と請負者との関係も含まれる。
- 従業員や請負者,業者には,誠実かつ公平に対応すること。
2. 専門分野の発展に貢献する
- 結果は公表すべきである。それにより他者がそれから学ぶことができる。
- 専門分野における教育や組織的(地域的,全国的あるいは世界的)な取組みに時間を割くべきである。
- 個人で活動している技術者が専門的な技術を発展させるよう支援すること。
特に十分に認められていないグループに対しても注意を払うべきである。様々な背景が専門技術を強固にするだろう。
IV. 他者に対する義務
GIS専門技術者は自らの活動が他者に与える影響を認識し,他者に悪影響を及ぼすことを避けなければならない。それゆえ有資格者は,次に示す事項を心がけなければならない。
1. プライバシーの尊重
- 個人のプライバシーを保護し,特に繊細な情報には注意を払うこと。
- ジオコーディングや2つ以上のデータベースを組み合わせる操作により新たに判明する個人情報については特に注意を払うこと。
2. 個人の尊重
- 個人の自主性を奨励すること。例えば,個人が自分自身に関するデータが間違っている場合,データベースを修正したり,あるいは消去したりするようなことに寛容であるべきである。
- 個人の生活に不必要に立ち入ることは避けること。
- 個人に関する情報を公開するときは誠実であること。
- 全ての個人を国籍や性別あるいはその他,与えられた作業と無関係の基準によって区別しないこと。
その他
有資格者が国際的な水準にあることの裏付けになることを意図し,この倫理規定は,GISCIの Code of Ethicsを翻訳し,可能な限りそれに合わせています。